「雄也、ジュース飲みたいんだけど」
「で?」
「買って来いって言ってんの」
「パシリかよ俺は」
本の並べ方とか、アクセの手入れとかに関して
俺にしょっちゅうウルサく説教してくるくせに、
人にモノを頼む態度はコレだ。
ホントに成人か?
「なにが良いの」
「葡萄ジュース。100%の」
「じゃコンビニ行ってくるわ」
「早くしてよー」
「お前さぁ」
「早く帰って来てッ」
ひとりが寂しいなら一緒に来れば良いのに。
我が侭。
こんな我が侭な女見たことねぇ。…あ、男だ。
葡萄ジュースと、読みたかった雑誌と、スナック菓子を
レジに持っていくときに、ちらっと腕時計を確認する。
家を出てから15分も経ってない。
でも、気にしてしまう。
家でひとりで待ってるのって、寂しいかな。
ジャガーさんいるから、大丈夫かな。
昔は何日かまともに顔を合わせられないときだって、あったのに。
そんときだって寂しくなかったわけじゃないけど、今ほどじゃない。
そっか。アイツの心配だなんてただの言い訳で、
寂しがってるのは俺のほうじゃん。
あーちくしょ、やっぱガキは俺か。
「ただいま」
おかえり、も無しに手提げ袋を漁ってジュースを取り出して、
それから一緒に買った雑誌を手に取る。
「あーこれ読みたかったやつー」
「俺んだよ!」
「良いじゃん、先読ましてよ」
いつの間にかスナック菓子の袋も開けて、ジュースをコップに移して、
ソファに寝転がって雑誌をひろげ、くつろぐ体勢に入ってる。
「…ん、なに」
呆れて立ち尽くす俺に気付き、ちょっと首を傾げて訊いてくる。
なにじゃねーよ。
「ちとせー、そりゃあんまりだろ」
「んー?あ、お菓子食べたい?」
「でなくて…」
その菓子も俺が食いたくて買ったんだって。
「あーん」
目の前に差し出してくるから、思わず口を開いてしまう。
なんだよ、飼い慣らされてる気分だ。
こんな勝手な飼い主、俺がペットなら絶対嫌だけど。
「ジュースもあげる」
「…どーも」
そう言うと、ちとせがジュースを少し口に含み、俺にキスをした。
果汁の甘みを纏った舌を絡めてくるから、自分もそれに応じる。
しばらくして唇を離し、俺の後ろ髪を掻き撫でながらにっこり笑ってちとせが言う。
「おつかいご苦労様。よく出来ました」
たまにムカつくけど。溜め息もつきたくなるけど。
こういうご褒美も悪くないなって思っちゃう俺は、つくづくガキなんだ。
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