起きてすぐに連絡入れときゃ良かった、
ケータイはベッドに投げ出したまま、
準備もそこそこに家を飛び出して来てしまった。
ケータイ忘れたことに気付いたのは、
車に乗って少し走って信号に引っ掛かったとき。
今から取りに戻って余計に時間かけるのも…
いや、どうせ大幅に遅れてんだし、
ちゃんと連絡とれる形にした方が…
悩んでる間にも信号は青になり、結局戻らず待ち合わせ場所に向かう。
あーなんで電話入れなかったのかな俺、ホント馬鹿。
ケータイ見たとき、ちとせから着歴いっぱい入ってて、
そんだけでテンパっちゃったんだ。
とにかく早く行かなきゃ、って、そればっかり。
ちっくしょ…今頃ケータイ鳴ってるかな。
つか、まだアイツ待っててくれてんのかな、
もしかしたら帰っちゃってたり…十分有り得る。
20分ほど走って、駅に車停めて、駅前の公園に急ぐ。
ちとせは、待っててくれていた。
噴水の縁に座って、膝に肘を乗っけて、頬杖つく格好で。
遠くを見つめたまま微動だにしない。
イラついてる気配すら読み取らせない、
ていうか話しかけちゃいけない雰囲気で。
あぁこれはマズい、本気で怒らせた、
そう後悔しまくって心の中で謝りまくって、
恐る恐るちとせの視界に入ってみる。
「…雄也!」
ごめんなさ…、そう言おうとしたら、
弾けるように立ち上がって駆け寄って来たちとせに、
凄まじい速さでパンチを入れられた。みぞおち。
「……ッ!!」
「…理由」
「…ぇ…と、…げほっ」
「早く言えよ」
「…あの、寝坊…で…す」
身体を折って痛みに耐える俺を、通行人がちらちら見る。
気にすることなく、ちとせは俺を見下ろしたまま。
「………」
「ごめん、ちとせ、ホントごめんなさい」
「ケータイは」
「家に…忘れて」
大き過ぎる溜め息を吐くちとせ。
まだ腹を押さえながら俯く俺。
周りからはどんな二人に見えるんだか。
しばらく沈黙が続いて、また謝ろうと口を開いたら、
小さな身体が俺にしがみついてきた。
「えっ…と、ちとせ…」
「心配した」
「ぇ」
「遅刻するし連絡取れないし事故に遭ったのかもとか思った」
「ぁ…」
「ヤベーかなりムカついてる俺」
「…ごめん………泣いてる?」
うっ、また同じ場所にボディーブロー。
さっさと身体を離して、歩き出すちとせ。
「焼き肉の気分だなー、今日」
「肉!?」
「あ?」
「…ぁ、奢りマス」
「当然」
でも2時間半、ずっとあの場所で待っててくれたんだ。
そんな奴を俺、泣かせちゃったんだ。
…うん、泣いてたよな、あの目は。
いつも以上に王子様扱いするのは、当然です。
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