目の前にずい、と差し出されたガラスの器。
盛られた小振りなイチゴはどれも既に、
へたの部分がキレイに切り落とされていた。
「なんスか」
「食べさして」
無理やり器を俺の手に乗せ、正面に座る。
「いや自分で食えよ」
「やだ」
だって、自分が食べたいから、
わざわざへたの処理までしたんだろ?
そこまで出来たなら、あとは口に入れるだけじゃん。
楽しみが目前にあるのに、ありつこうとしない。
まるで俺におあずけを言いつけられたように、
ちょこん、と正座をして待っている。
まぁ別に、食べさせてやって俺が損することはないし。
「しゃーねぇなぁ…フォークは?」
「要らない。そのまま手で」
「マジでかよ。いいけどさぁ」
水滴がついた紅い粒をひとつ摘んで、
「はい、あーん」
こんなセリフが出る辺り、俺もノッてるな。
イチゴと同じくらい紅い唇に運んでやる。
伏目がちの睫毛、キレーだな…なんて思った瞬間、
柔らかい唇がイチゴごと俺の指を捕らえた。
「こら、指、食うな」
冗談ぽく言おうとしたのに、逆に声が震えた。
舌で指をなぞられるのが分かって、そこから熱くなる。
俺が戸惑った顔で見ていると、ちら、と上目遣いで、
最後に軽く指先を噛んで解放してくれた。
「…あま」
「お前もー自分で食え」
「やだ、もいっこ」
器に盛られたイチゴから、お前の唇へ、
それを舐める舌から、俺の指先へ。
紅が感染していって止まらない。
すぐに俺の頬まで、心臓まで染まるんだろう。
あーヤバいな。
熟しきったら俺、お前に食われそう。
自分が甘いかどうかなんて知らないけど、
首筋につく紅い痕を想像するのは容易だった。
PR