「ただいま」
電気のスイッチを入れながら、ちょっと遠慮がちに呼びかける。
明るくなった部屋、床でもそり、と動いた毛布のカタマリ。
「何してんの」
何が…っつーか、誰が入っているかは分かってるから、
近づいて声をかけてみる。
見下ろされてるカタマリは反応しない。
ふとテーブルに目をやると、開けられた胃薬の箱とコップ。
「…腹痛いの?」
訊くと、ようやく呻くような返事が返ってきた。
そっか、コイツ胃弱いんだっけ。
また何かストレス溜めてんだろうか。
そっと頭の方の毛布を捲ってみると、
眉根を寄せて汗をかいているコイツの顔。
…すっげ、辛そう。
―床で寝たら、身体痛いよ。
言いかけたけど、やめた。
ベッドまで行くことすら出来ないから、ここで寝てんだよな。
かといって、コイツより華奢な(認めたくないけど)
俺が運んでやれるわけねーし。
考えた末、出たのはこの言葉。
「薬いつ飲んだ?」
「…さっき」
「あれ効くの早いから、もーすぐ楽になんじゃね」
「…ん」
知らねーけど。
俺は胃薬とか飲んだことねーけど。
でもこう言うことで、ちょっとでもコイツが楽になればって。
腹でも撫でてやろーかな。
嫌がられるかな。
…俺って何も出来ないのな。
少しして、コイツの呼吸が落ち着いたから、
あぁ、寝たんだって分かった。
眠りにつけるってことは、楽になったんかな。
起きたらお粥でも作ってやろう。
痛くなった身体をマッサージしてやろう。
いつもの笑顔でコイツは遠慮するだろうけど、
俺はいつもの高姿勢で、いつもは絶対しないような
そんなことをしてやろう。
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