「…ちょっと」
「なに恋愛小説?ぅゎキャラじゃねー」
「っせーな返せよてめぇ」
「えーちょっと読まして」
隣に腰を下ろしたコイツから取り返そうとしても、
上手くかわされて敵わない。…ムカつく。
ぱら、ぱらと数ページ捲りながら目で活字を拾う。
「…ふーん…ホント普通の小説だね」
「だから何だよ、ほらー早く」
手を伸ばして催促、やっと本が戻された。
「お前、本だけは選り好みしないのな」
「あー、かも」
「食いモンもすんげぇ好き嫌いあんのに」
「だなー」
「こうやって天気いい昼下がりに、一緒にいる相手もさ」
風が吹いて、乱れた前髪をコイツの指が直す。
指先の温度と髪の間から見えた、まだガキっぽい笑顔。
「俺じゃないとヤじゃね?」
「…別に。お前ん家の犬でもいーよ」
なんて。読書の時間邪魔された仕返し。
へにゃっと笑って崩れたコイツの横顔、嫌いじゃない。
こうしてからかう相手は、お前じゃなきゃダメかもな。
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