「おはよーおはよーおはよー」
なに、うっせぇな今何時?
…まだ6時前じゃん。
「…雄也…珍しく早いね」
「うん、弁当作る」
「べんとお?」
妙に張り切ってる奴の手には、
『子供に人気!お弁当のおかず100』。
いつ買ったんだろう、こんなレシピブック。
いや、前から持ってたのかも。
どうでもいいけど。
「…作れば?」
「ちとせも一緒にやんね?」
「やー、めんどう」
「せっかく早起きしたんだし」
お前に早く起こされたんだよ!
「俺まだ寝る」
「二度寝したら遅刻だよ」
「午前の講義無いの、今日」
再び布団に頭まで潜り込む俺に、明らかに不満げな雄也。
てか、なんで急に弁当だよ。
「なー、作んね?」
「しつこいよ、学食で良いじゃん、いつもどおり」
「…金無いし」
は?なんで?
今月そんなに出費無かったじゃん。
学食も行けないほど金欠って何事。
俺は怪訝な表情を雄也に向ける。
「…や、正確には、金貯めてるってか…節約?」
少し目をそらしながら答える。
節約、なんのために。
今流行ってたっけ?
将来のため、とか?
「なんか欲しいもんあんの?」
「……来週…」
「来週?」
おい、顔赤くなってんぞ雄也。
もどかしいなぁ、早く言えよ。
「…誕生日、じゃん。ちとせ」
あ。
あ、そっか。そうだ。
あぁ、なんだ、それか。
なんだ、そんな、そんなの、
「…勝手にすればっ」
「や、あの、だから、」
「なおさら一人で作れっ」
そんなん言われて一緒に弁当なんか作れるかよ。
そこまで俺は甘い男じゃない。
「はいはい、じゃあ一人で頑張りマス」
諦めてキッチンに向かう雄也の背中。
別に寂しそうじゃない。
むしろ、俺の反応を楽しんでるようで、癪だ。
今日は俺、家で昼飯済ませるつもりだったから。
自分で作る、つもりだったから。
だから弁当なんか、いらないのに。
「…俺の分も作って」
呟くように投げ掛けた言葉に、
振り向いた笑顔が返事をした。
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