飛んでけ

この辺で俺ら、よく遊んだよね。
…えーマジで。覚えてないの。
そんなに昔のことでもなくね？
だって小学生くらいだったと思うし。
まぁ、いーや。

んでさぁ、そんときはここ空き地だったじゃん。
つーか、だったの。
今、なんかアパート建ってっけど。
そんでお前と鬼ごっこしてさぁ、お前派手に転んだの。
でっけー石あって。
覚えてる？あ、思い出した？
そう、んでお前めちゃくちゃ泣いてさぁ、
俺マジでびっくりしたから、あん時。
どこも血ぃ出てねーのに泣きやまねぇのお前。
どーしよーとか思って、とりあえず頭撫でて
「痛いの痛いの飛んでけー」やったらさ、
なんか泣きやんだよね、お前。
頭が痛かったのかよー…ておい、シカトすんなって。
ごめん、もう昔の話しねぇから。
なー、ごーめーんーってばー。

…ねぇねぇ、あのおまじない？みたいのって効くよね。
なんでだろーね。
今の歳でも効くと思う？
かなりムカついたときとか、泣きたいときとか。
「飛んでけー」つったら、平気になるかな。
俺ね、多分お前にやってもらったら効くと思うさ。
だからさ、どーにもなんねぇときさ、電話していー？

…ん、アリガト。

俺のケーキ

マジ美味しいケーキ屋があんだ。
お前、甘いの好きじゃん。
今度連れてってやるよ。
や、今すぐには教えない。
二人で会えるとき、一緒に行きてぇし。
…は？面倒とか言うなって。
いーじゃん、俺が奢るから！な？
マジおすすめのケーキあっから！
お前好きだよ、ぜったい。
ハート型で赤いの。
上に苺とホワイトチョコ乗ってんだぜ。
見た瞬間、お前向きだと思ったし。
食いたいしょ？な？な？
じゃあさー、今週の日曜…暇？
俺空いてるから。
１時に、大丈夫？
うん、いつもの、そう、ベンチのとこで。
…分ぁかってるって、俺の奢り！
つーかケーキ一個でがめついな、お前…。
あ、いや、すいません、一緒に行きたいですハイ。
なんか悪ぃ、我が侭きいてくれて、サンキュな。
ん、また日曜に。じゃーな。


（早く会いたい。
　早く食わせてやりたい。
　すげぇ赤い甘いケーキ。
　そんでアイツの笑顔が見たい。
　俺の一番好きなケーキ。）