あっぶね、飲んでたビール噴き出すとこだった。
「なんだよ、唐突に」
「んん〜?」
「誰だって多かれ少なかれハゲんだろ」
そりゃあ、いくつになってもフサフサな方もいらっしゃいますが。
「でもー雄也は多かれのほうだ!」
「なんでそんな根拠も無ぇのに」
だいぶ出来上がっちゃってんなぁ、言葉がおかしい。
缶ビール3本はちとせが酔うには十分過ぎる。
もう俺に寄り掛かりっ放しだし。
腕を絡ませて俺の肩に頬を擦り寄せたり、
ちとせから手を握ってきたりなんてことは、
シラフじゃなかなか無いからなー。
嬉しい状況っちゃそうなんだけど、
そろそろベッドに連れてかないとこのまま寝られてしまう。
これ以上変な予言されても微妙だしね…。
「よしちとせ、もう寝んぞ」
「えー?」
「片付け明日でいいや、はい立てる?」
「運んでー」
この甘えんぼめ!
そして俺の甘やかしんぼめ!
ちとせをおぶって寝室に向かう途中、
背中でまたムニャムニャ言うのが聞こえた。
「雄也の髪がなくなってもねー大好きー」
まさかの、恋人がハゲること前提での愛の言葉。
まったくムードも何もあったもんじゃない。
呆れを通り越して、なんだか笑ってしまう。
こいつの頭ん中はどうなってるんだか。
いや、それより将来俺の頭髪がどうなることやら。
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