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創作小話。同性愛的表現含。
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部屋に帰ってみたら、ちとせがソファで何か弄っていた。
俺に背を向けたまま、おかえり、といつも通り。
ただいま、と返事をし歩み寄って手元を覗き込む。

「…紙コップ?」
「糸電話」
「なに、作ったの」
「んー」

白いシンプルなふたつの紙コップを細い赤い糸が繋ぐ。
子供の頃、何度か遊んだ記憶がある。
あの頃は糸で声が伝わる不思議さに魅了された。

「…遊んでみる?」
「えー?…いーよ別に」
「じゃなんで作ったのさ」
「なんとなく。童心に返って」

俺は苦笑しながら、コップをひとつ手に取る。
口元にあて、あー、と声を出してみても、
籠った音がコップ内に響くだけ。

相手がいないと成り立たねー。

「なぁ、ほらそっち持ちな」

俺の様子を無言で見つめていたちとせに、
テーブルに置かれたままの紙コップを指して言う。

ちとせはゆっくり手を伸ばしてコップを掴み、
少し迷ったようにしてから耳元に持って行った。
俺は糸がピンと張る位置にまで少し移動する。

「あーあー、聞こえますかー」
「聞こえるよ」

ふふ、と小さく笑いながら答える。

「ちとせも喋るときはコップに向かって」
「はい」
「返事短いよ、糸電話じゃつまんねってソレ」
「だって、なに話すの」
「なんでもいーじゃん、今日あったこととかさぁ」

そう言うと、少し間を置いて。

「…好き」
「…え?」

糸を伝って俺の耳に届く微かな声。
俺は、コップに向かって返事をするのを忘れてた。

「大好き、雄也」

ちとせは少し離れた場所で、赤く染まる顔を隠すように、
両手でコップを口元にあてて再び囁く。
その眼は、真っ直ぐに俺を見つめて。

僅かな振動と熱が、耳元と心臓をくすぐる。

突然のムードに戸惑っていると、ちとせがニッと悪戯ぽく笑った。

「はい、サービス終わりね」
「サ」
「お腹空いたから早くなんか作ってー!!」
「ちょ、急にでっけぇ声出すなよ!ビビるわ!!」

真面目にドキドキした自分がバカみたいに思えるくらい、
2人の空気はいつもの軽い調子に戻っていた。

糸電話って、こんなに心臓に悪いものだったっけ?

直接囁かれたことだって、今まで何度もあった。
だけど、これはこれで…ねぇ、まさに
“繋がってる”って感じ?
ケータイとかより、ずっと刺激的。
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初めに
おおさわ潤が創作する、BL含む日常小話。 友情物語もあり。 過激な性的表現・年齢制限を含む作品は無し。 自己範囲でお楽しみ下さい。
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