今はあんまり聞かなくなったけど。
営業スマイルかー。
俺は接客とかぜったい無理だろうな。
愛想笑いは、まぁそれなりに必要に応じて出来るけど、
仕事で、しかも何時間も笑顔でなんかいられない。
スマイル下さい、なんて茶化す客に遭った日にゃ、
ホットコーヒーをぶちまけてやりかねない。
もちろん笑顔なんかそこには無いよ。
「ちとせには無理だね」
俺の考えてることはお見通しか。
雄也が笑いながら俺の頭を軽く小突く。
それに少し反動をつけたように、雄也の肩にたらっともたれる。
「だってね、俺のスマイルはタダじゃないもん」
「お、言うね」
ホントに心からの笑顔を見せられるのは、家族以外には
雄也。ただひとり。
ジャガーさんと遊んでるときも心から楽しいよ。
だけど雄也に向ける笑顔とは、また別なんだ。
「貴重なんだよ」
「そう?いつも笑ってるじゃん」
「それは」
それはお前がいるからじゃん。
俺の笑顔が常にあるのは、誰のおかげ?
「…分かってねーもー」
「…?」
「俺の笑顔、ちょー高いよ」
「マジで!」
「雄也のお金でじゃ到底買えないね」
「えっ、今まで見てきた笑顔は有料!?」
「普通ならねー」
だけど雄也の場合は特権でもあるの。
ふふ、俺を笑顔にしてくれる雄也。
「身体で払ってよね、おにーさん」
「…毎晩ちゃんと払ってますけど?」
「まぁだ。足りないよあんなんじゃ」
もっと。もっと。
俺の笑顔が見たいなら傍にいて。
「今日もいっぱい、幸せに笑ったよ俺」
「じゃ、今夜のお会計に参りますか」
ふたりでふざけながら寝室に向かう。
金で笑顔になんてなるわけない。
雄也がいるだけで良い。
雄也の前でだけ。
だけど俺の笑顔は高いからね。
今夜もしっかり、ちょうだいね。
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