激しくなくて良い。
痛くなくて良い。
たとえば指先、鎖骨、薄く浮き出る血管、
愛する人の身体の隅々まで唇を這わせて、
髪を乱しながら耳元で囁くだけで良い。
「っ…はぁ…」
それだけで、十分過ぎるほど熱を帯びる。
呼吸は乱され、不規則に微かに吐息は漏れる。
「ゆ、や…」
「…なに…」
「もっと…っ、足りないよ」
「大丈夫」
「やだ!さっきからずっと、こんなん…っ」
「うん」
「ねぇ、もっときてよ…んっ」
感じてるんだ。
まだ、まだと欲しがる。
こんなに感じてるくせに。
足りないだなんて。
その上気させながら乞う顔、好きだよ。
だけどもう限界、かな。
その涙目は俺だけを睨み付けて、
華奢な四肢は俺の身体だけにすがりつく。
背中に爪痕を残しながら、俺の髪を掴みながら。
発する言葉が、吐息に混じれて途切れとぎれだ。
お前が求めている俺の唇は、今は首筋辺りにいるよ。
「早く…っ」
軽い優しい愛撫しかしていないのに、こんなにも。
愛しいよ、愛しいよちとせ。
「雄也、が…っ欲し、い…」
「俺も、ちとせが欲しい」
「ねぇ…欲しい。早く欲しい。もっと強く」
もっと強く抱いて。
「…痛いくらい」
「痛いのはヤダ」
「…激しくてイイ」
「SMに興味ないから」
だけどいくら優しくしたって、そのまま終わらせようなんて、
そんなわけいくはずがなくて。
結局求め合う。
余裕ぶってた者同士、貪るようにキスをして、
互いの纏うものを一枚ずつ取り払って、
加速していく。ブレーキなんかない。
ただひたすら、見たい触れたい感じたい。
愛した、愛された赤い証を身体のあちこちに残して。
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