…あぁ、そっか!そういう問題があったんだ…。
「雄也さんは、いつもどちらで寝てらっしゃるんですか?」
えっ、いきなり俺に訊く!?
いや、まぁそりゃそうか、ココちとせん家だし。
半ば居候な俺が寝てる場所…は。
「…ベッドで…」
「え、雄也さんのベッドもあるんですか?」
「ぁー、いや…その」
なんで口ごもるんだ俺。
正直に言っちゃえば良いじゃん。
でもさ、でもなんかヒかれたらやだし…さ。
「あ、ちとせさんのベッドでですね?」
サラッと?サラッと言っちゃうことなのそれ?
困惑して、助けを求めてちとせの方を見る。
「うん、狭いけど仕方ないし。二人で寝てる」
コイツもかよっ!!
暴露して良いんだっけ、こういうこと…。
適当に今夜からはソファで寝るつもりだったのに俺。
この事実が知られた今、ソファで寝るとか言い出したら、あまりにわざとらしい…。
「そうでしたか。仲良いんですね」
えっ、ちとせの発言に違和感なし?
この子、ただもんじゃねぇ…。
「凛華、確か寝具は持ってきてたよね?」
「はい、敷き布団など、一通り」
「んー…じゃあ…」
考えあぐねて、ちとせが出した結論は。
「俺のさ、パソコン置いてある部屋あるじゃん、
そこで寝てもらっても構わない?」
ちとせの住む部屋は2LDK。
ソファのあるリビングに、ダイニングにキッチン、あと2部屋。
ひとつは寝室としての部屋―セミダブルのベッドとサイドテーブル、小さい本棚、コンポが置いてあるだけ―、
もうひとつは、大量の本が陳列した戸棚、パソコンなど、主にちとせの勉強道具がある部屋。
実際、ちとせはリビングで勉強するから、その部屋は物置状態だけど。
「はい、十分です、ありがとうございます」
「布団敷くスペースもあるから大丈夫だね。
本も興味あったら自由に読んで良いからさ」
凛華さんの寝具や荷物をひとまずその部屋に運び、
荷解きは明日で良いかってことで、風呂に入ってしまうことにした。
一番風呂を凛華さんに勧めたけど遠慮され、
ちとせは観たい番組があるとのことで、俺が最初に入ることになった。
シャワーを浴びている間、凛華さんのことを考えてしまう。
俺とちとせがひとつのベッドで寝起きを共にしてることに、
まったく驚いた様子もなく「仲が良いんですね」。
俺らの関係に気付いて…知ってんのかな。
それか、底抜けに純粋な子なのか…。
うーん…分かんない…。
とにかく今夜からも…ちとせと寝られる?
それは嬉しいけど…、なんか複雑だっ!
シャワーだけで済ませたのに、やけにのぼせた。
「ちとせさん、ジャガーさん、雄也さん、おやすみなさい」
「あぁ、おやすみ。疲れてるだろうから、ゆっくり休め」
「うん、おやすみ…。…?」
待てよ?今あの子、ちとせ、ジャガーさん、俺の順で名前呼ばなかった?
もう俺のランクは犬以下ですか!
一日目にしてコレですか!凹むわぁー…。
うっすら視界が滲むよ…。
「俺らも寝んぞ」
少し沈んだ俺を、溜め息を吐きながら寝室に引っ張って行くちとせ。
男二人には確かに狭い、いつものセミダブルベッド。
そこに、ぼむっと投げ捨てられた俺。
「なんか不満?そんなにソファで寝たいか貴様」
「そーでなくてさ…」
「なんだよ…どしたの」
ちとせが俺の上に覆い被さって、髪を撫でる。
優しい感触に安心する。
「…不安?」
「…とーぜん、そりゃねー…」
「凛華、良い子だよホントに。賢いし」
「それは分かってるよ、うん」
「でも…いきなり住人が増えたんだもんね、不安も当たり前か」
「上手くやってけっか、もーどーしよ悩む…」
顔を覆う俺の手を退けて、ちとせがキスをする。
「大丈夫だよ、楽しくなるって」
「うん」
「俺らの関係は変わんねーし。今いちばん不安なのは凛華じゃん?」
そっか、そうだよな。
親戚とはいえ、敬語使うくらいだから、そこまで親密ではなかったんだろう。
それに加えて全然知らない男もいるし…。
いちばん、心細いのは、あの子だよな。
部屋で泣いたりしてないだろうか、ふと心配になる。
一日目、少し自分から警戒してしまったけど、
明日はもっと…ちょっとでも凛華さんが気楽に生活出来るよう、
俺からも積極的にコミュニケーションとってみよう、うん。
…嫌われてっかも知んないけど…。
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