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創作小話。同性愛的表現含。
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「…あゆみくん」

さっきからクッションを抱き締めてソファで丸くなって。
何を聞いても無言。
顔をクッションに押しつけて、表情が見えない。
じっとしたまま。

泣いてるのかな。

「苦しくなるよ」

呼び掛けると、抱き締める手に力が入る。

「ねぇ、どうしたのさ…」
「こんなの苦しくないもん」

やっと顔を上げた。
あ、やっぱり泣いてたんだ。
真っ赤に腫れた瞼を指でそっと撫でる。
あゆみくんはバツが悪そうに、だけどされるがまま。

「なにがあったのかな」

優しく尋ねたつもりだったけど、あゆみくんの目にはまた
たちまち涙が溢れ出てきてしまった。

えっ…どうしよう…
こんなに泣くなんて。

「もうっ…やだぁ…!」
「え?」
「ダ、メ…なの!もう、俺っ…」
「とりあえず落ち着いて、あゆみくん」

しゃくり上げるあゆみくんの背中をぽんぽんとして、
だんだん治まっていくのを待った。

「…勉強全然出来ない」

落ち着いて深呼吸。
そして発せられた言葉はこれ。

「…勉強、ねぇ…」
「こないだの模試がね、全然出来なかった」
「志望校判定は…」
「…D」
「…そっ…か…」

この時期、第一志望校がD判定は厳しい。

「で、でも第二志望もあるじゃん、そっちは?」
「A」
「ほら、まだ良かったじゃん、第二と言えどもさ」
「でもこれ、滑り止めだし」
「………」
「俺、ぜったい第一行きたいんだ」
「なんで、そこまで」
「言ったじゃん、たつきと一緒のトコ行くって」

は?あれ、マジだったわけ?
その場の冗談だと思ってた。
そんな真剣に、考えて…。

「…でも、こんなんじゃダメだよね。
 やっぱり俺には無謀だったかな」
「………」
「けど行きたいんだよ、ホントだよ!
 不純な動機とか言われても仕方ないけど、
 俺、たつきと同じ大学行きたいんだ」
「あゆみくん…」
「だから、あの、今回の判定はDだったけど、
 実は前回はEだったんだよ?これでも上がった…」

そうだ、あゆみくん、あんなに頑張って勉強してた。
実際、こうやって僅かながらも確かに成果が表れてる。

「あゆみくん…」
「でもやっぱりダメなんだね、俺じゃ無理…」
「あゆみくん!」
「っ…」
「そんな諦めんなよ」

迷うなよ。
努力してんじゃん。
最初から試合放棄して、諦めてる奴見てみろよ。
かっこわりぃ。
お前は望みちっちゃくても、努力してんじゃん。
動機がなんだよ。
入りたいって気持ちはホントだろ。
誇れよ、自分を。
そんな悲観ばっかりして、自分が可哀相だ。

「大丈夫、一緒に、行こう」
「たつき…」
「勉強して、これからも、一緒に」
「…うん」

結果はどうあれ、努力する自分を恥じるな。
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初めに
おおさわ潤が創作する、BL含む日常小話。 友情物語もあり。 過激な性的表現・年齢制限を含む作品は無し。 自己範囲でお楽しみ下さい。
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