腕時計を見ると、時刻は既に0時を回っていた。
休日に呼び出されることも、夜中の電話もよくあるけど
こんな時間に来てくれっていうのは珍しい。
「なんかあったの」
「ん……いや、別に」
焦っているようでもなく、ただ口ごもる様子に
とりあえず怪我とか病気とかではないんだろうと安心する。
ホラー映画でも観てしまったのか、なんて
推測してみるけど、どうせコイツは理由を言わない。
無理に問いただしたら拗ねるだろうし。
「……やっぱ、だめ?」
滅多に聞かないような落胆した声で訊ねられる。
コイツは俺の性格知ってるから。
そんな調子で言われたら放っておけないじゃん。
でも、俺だってコイツの性格は知ってる。
素直じゃないけど、計算して行動することもない。
我が侭なくせに、本当にお願いしたいときは控えめ。
だから。
「わぁった、すぐ行くから待ってて」
「ん。どうも」
携帯を閉じ、薄手のジャケットを羽織る。
車のキーを手に取り、今日は酒飲んでなくて良かったと思う。
無性に寂しくなったりすることは、あるもんだから。
多分、今夜は泊まり。
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