「……バッカみてぇ」
会いたいと思ったときに、お前が来てくれたらいいのに。
俺の予定とかそういうもの全部無視してでも良いから。
だって俺から言えねーんだもん。
お前が我が侭になって、俺のとこに来てくんないかな。
…って、そんなん自分が一番我が侭。
ギターを弾く気にもなれない。
酒なんか飲んだら、必要以上に酔って余計に寂しくなるかも。
変なプライドと不安のせいで、身動きがとれない。
こういうときに限って、気持ちのままに行動できない。
ベッドに身を投げ出して、枕もとの携帯を見つめる。
「…連絡来ねぇかなぁ…」
どんな下らない話にも付き合うから。
ため息をついたのとほぼ同時に、鳴り響いた来客のチャイム。
起き上がってのろのろと玄関に向かう。
鍵を外すと、向こうから勢いよく扉を開けられて驚いた。
「どちらさ…」
「よっ!ねぇねぇちょっと聞いて、先週出したレポートが
松本助教授に褒められちゃってー」
「…おま……」
「あ、上がらしてね、そのレポート見せたげるから。
パソコン借りていー?」
「い、いけど…」
ズカズカと奥に進んでいくお前。
突然で戸惑ったけど、待ちわびていた人。
「もーホントマジ嬉しいの!
あの助教授、ただの嫌味なハゲだと思ってたのに、
ちゃんと認めるとこは認めてくれんだねー。
あれ、ねぇこれ何処にSDカード入れんの、あ、あった。
いやーお前が集めてくれた資料のおかげだわ!
マジサンキュな!」
「そ、か。それは良かった」
「あ、てかねぇお前ちょっと不用心だよ、
さっき相手確認しないでドア開けたろー」
やたら口数が多い、ホントに嬉しいんだな。
そーいうお前見てると、なんかこっちまでさ。
「…今日、ゆっくりしていきなよ」
「おーやった!晩飯なに?」
俺もこんくらい、厚かましく会いに行こう。
今日のでお互い様だ、明後日あたり、覚悟しとけよ。
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