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創作小話。同性愛的表現含。
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「風呂あいたよー」
「おー…ってお前ちゃんと髪乾かせよ」

タオルを頭にかけ、風呂上がりの一杯
―つっても、酒は弱いからアイスコーヒーなんだけど―
を冷蔵庫から出していると、コイツの忠告。
髪なんて…ドライヤーめんどくさいし、
いつも自然乾燥でいっかって済ましちゃうのに。

「すぐ乾くって」
「あんねー、風邪ひくでしょ。ほらおいで、乾かしちゃるから」
「いーよーそんなんー」
「いくねーよ、ほら早く座って」

こういうとこ、強引。
でも別に断わりきる理由ないし。
鏡の前のイスに座らされ、俺自身、
それから後ろに立つコイツと目が合う。
ドライヤーから熱風が送られ、コイツの指が
俺の髪を撫でたり摘み上げたり、半ば乱暴に掻いたり。

「あっついッて!」
「ぁ、ごめんごめん」

濡れて掻き回されて冷えて、熱を与えられて、
だんだん乾いていく。その繰り返し。

「お前、乾かすの下手ー」
「ごめんなー、人のやんの初めてでさ」
「下手くそ」
「はいはい、もうすぐ終わりますよー」

まるで恋愛、みたいだ。
艶っぽく水が滴り、掻き乱され、冷たくなる。
かと思えば火傷しそうな熱で徐々に落ち着く。
それは人によっては倦怠ともとれる、乾き。

「出ー来た。ほらサラッサラ!お前の黒髪!俺うま!」
「ぁーいい感じだ」
「だろ?自然乾燥だとバサバサすんよ。
 したら俺、風呂入るわ」

ただ洗うだけじゃダメで。
その後まで丁寧にしてやんなきゃ傷むんだな。

濡れて掻き回されて冷えて、熱を与えられて、
だんだん乾いていく。その繰り返し。
その繰り返しで、艶と潤いのある良質な髪になっていく。

「…明日から、ちょっと頑張ってみよ」

面倒がらず繰り返して一歩ずつ、キレイな恋に。
今日より明日は。明日より明後日は。
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初めに
おおさわ潤が創作する、BL含む日常小話。 友情物語もあり。 過激な性的表現・年齢制限を含む作品は無し。 自己範囲でお楽しみ下さい。
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