「お前、今日は香水つけてないの?」
「切らした」
「あーホント、じゃ作んなきゃだね」
一昨年の誕生日に俺がプレゼントしてから、
お前はずっと、それ以外の香水はつけてない。
俺が、お前に一番似合うようにブレンドした香水。
お前は俺だけのものって印をつけたくて、
縛るつもりで、いわば鎖のような目的で作った香り。
どう作ってるの、お前はそれを訊かない。
作るのは、俺の役目。
お前だけの香りをプレゼントするのは、俺だけの特権。
「なるべく早くね。あれつけないと、なんか変」
「だね。今日中に作るわ。俺もなんか物足りないし」
「…変態」
「なにが!?どこが!?」
お前だけの香り。
これが無くなったら、俺はどうなるんだろうか。
首筋や服やソファ、ベッドのシーツにも馴染んで、
いつでも俺を安心させてくれる香り。
お前がこの香りを纏わなくなったら、
俺は本当にどうなってしまうんだろうか。
お前を縛り付けるためにつけた印だったのに。
今、捕らえられて逃げられないのは、俺の方。
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