忍者ブログ


創作小話。同性愛的表現含。
68  83  82  81  80  79  78  77  76  75  74 
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

『ごめん、今日行けなくなった。研究が長引きそうで、
 いつ帰れるか分かんない。夜中かもだし』

大学から帰る途中、地下鉄のホームを出たときに届いたメール。
今日はこの後、ホントは雄也がウチに来る予定で。
最近はテスト期間だったから会ってなかったんだけど、
それも終わってやっと会えるねって。
一緒にメシ食おうって電話したのは昨日の夜。

嘘つき。

雄也はテスト以外にも研究とかあって忙しいらしく、
そのレポートを終えるまでは慌ただしいのは分かってた。
でも『大丈夫、明日は行くから』って言ったじゃん。
仕方ないこともあるって、頭では分かってるけど。
こんなことでムカついて、小さいガキみたいだけど。

『別に良いよ』

それだけ送信して、携帯を閉じてポケットに入れる。
すぐに聞き慣れた着信音が流れて、再び携帯を開く。

「もしもし?怒った?」

不安げな雄也の声。
声が聞けて、嬉しい。
でも遠くて。耳のすぐ側から聞こえるのに。

「別に」
「そっか。…さびしくない?」
「全然。バカじゃないの」
「ははっ、今度埋め合わせすっから。ごめんな」
「ん。じゃあな」

さびしくない?なんて。
答えは分かりきってることを、おどけて訊く。
俺の答えは、別に、とか全然、とか。
いちばんの嘘つきは俺。

いつでも会える。分かってる。
我慢できる。ちょっとくらい。
自分に言い聞かせる理性は嘘つき。

雄也の息遣いが残って紅く染まった耳と、
重く脈打つこの心臓は、下手な言葉より正直。
PR
初めに
おおさわ潤が創作する、BL含む日常小話。 友情物語もあり。 過激な性的表現・年齢制限を含む作品は無し。 自己範囲でお楽しみ下さい。
最新記事
バーコード
カウンター
Edit by : Tobio忍者ブログ│[PR]