真剣そうに尚且恥ずかしそうに頬を染めて言う。
ソファに座ってる俺の組んだ脚に手を置いて真正面から上目遣い。
「あの……ぇと、夜…さ、……消してくんない?」
一瞬、なんのことを言われているのか分からなかったが、
目の前のちとせの表情から、間もなく察した。
「あー電気?消してんじゃん」
「違う!豆電も!」
「え」
あの小さくてオレンジ色のやつ?
「いーじゃん、あんくらい」
「ヤダ」
「消したら何も見えないよ」
「見えなくて良んだよ!」
「それは俺がヤダ」
ぼんやりした明かりの中で、お前の顔と身体の震えを感じたい。
あ、ここイイんだ。
目と唇の潤みで分かる、微妙な変化。
徐々に汗ばんでいく首筋も、もがくようにシーツや空を掴んで、
そのうち俺の背中にしがみつく細い腕の動きも何一つ、
それこそ僅かに寄せる眉間の皺だって見逃したくない。
「……恥ずかしいのに…」
もうその目はこっちを向いていない。
しゃがみ込んで、俺の膝を抱え込むように腕を回して顎を乗せる。
「雄也恥ずかしくないの」
「俺、上だし別に」
「雄也の顔あんま見えない」
「いーよ、んなもん見なくて」
「何それ自分だけ」
諦めたのか溜め息をついて、膝から離れる。
ココア作ってくる、そう言ってキッチンに向かった。
消したら何も見えないなんて、嘘。
窓からの月明りで十分に光るほどお前は白い肌をしてるから。
むしろその眼と黒い髪は、月明りの下での方が映えるのかも知れない。
だけど。
月の中で光るお前を見て、歯止めが効かなくなるのが恐い。
そんな俺の火を見たお前に、恐がられるかも知れないのが恐い。
だから、消さない。
キッチンから戻ったちとせが、テーブルに2つマグカップを置いた後に一言、
「じゃー今日は俺が上やる」
えっ、いやそれは勘弁して下さい。
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