パソコン使うときとか、メガネが必要と感じるときがあって。
普段の生活には支障ない視力だけど、まぁ、たまにね。
「ちょ、かけさして」
「いーよ」
俺はメガネを外して、ちとせに手渡す。
何度もしてることだけど。
なんでわざわざ、いちいち、かけたがる?
「あんまり度入ってないね」
「まぁね、そう悪いわけじゃないし」
そんなことも前から知ってんじゃん?
フレームを変えたことだってないし、もちろんレンズも。
何度かけたって同じだよ。
そんなの、分かってんじゃん?
「雄也には、これが合うんだね」
フレームの縁を親指と人差し指でつまみながら、視線を遠くにやる。
少しぼうっとした表情。
やがて、メガネを外す。
「…俺には合わない」
呟いて、俺に返してくる。
「何度かけても、俺には合わない」
そんな当然のこと、今改めて言われたって。
「別にいいじゃん、合わなくても」
「俺、雄也のメガネ嫌い」
ちょっと拗ねた発言かよ。
俺だって、お前の使ってるコンタクトレンズとかメガネは嫌いだよ。
「雄也と同じ世界を見せてくんない」
お前と同じ世界を見せてくれないから。
本人達にしか合わない。けど。けど、けど。
俺は俺の目でお前を見るの。
そんでお前も、お前の目で俺を見てよ。
俺らそれぞれ自分の最良の目で視力で距離で歪みで、
お互いを感じていられたら良いよ。
それで良いよ。
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