雄也といるのは楽しいし嬉しいし、だけど。
だけどちょっと、なにかおかしい気がする。
「雄也、たまには家帰れよ」
「あー……だよな」
「家賃だって払ってんだしさ、勿体ないしょ」
「…ごめん、なんか居候みたくなってて」
「それは良いよ、全然。良いんだけど」
居候とかそんなん、本当にどうでもいいよ。
でも、こんなに連日泊まり続けなんて、今まで無かったから。
どうしたのかな、雄也、なにかあったのかな。
優しく、さりげなく、訊いてあげられたら良いのに。
「帰りたくないの」
「……んーん」
「じゃなんで」
これじゃダメだ、冷たい感じがする。
突き放したいわけじゃない、なのに俺の口は…。
まるで、出てけ、って言ってるよう。
「…迷惑、とは分かってんだ、ホントごめん」
「迷惑なんかじゃないって、でも」
「ここにいたい」
ジャガーさんに寝床も作ったよ、お前の着替えも勉強道具も、
好きなCDも全部この部屋に持って来た。
洗面所のコップには歯ブラシが2本入ってるよ、
もうこの部屋には、お前の質量が溶け込んでる。
あまりに自然に鮮やかに、戸惑いも帯びて。
「いたい…って」
「……いたいんだよ」
「住む…の」
「…………分かんない」
少し高鳴った俺の胸は、期待したんだろうか。
雄也がずっとこの部屋で生活することを想像して。
望んだ、のかも。
でもどうして、何処かで「いけない」と制する自分。
雄也と住むことになったら、ずっと一緒だけど、
それはきっと幸せに変わりないことだけど。
カーテン、そうだ、青いカーテン。
一緒に買いに行って、結局おそろいにした。
雄也の部屋にも同じカーテンはあるのに。
俺のこの部屋にも、同じ青はあるのに。
お前が今、自分のあの部屋を必要としてないなら、
俺らが一緒に買った青の意味も無くなるの。
お互い行き来して、言葉には出さないけど、
「同じ空間だ」って安心する時間は、どこへ行くの。
「……帰って欲しいって、言ってるわけじゃないから」
「…うん」
「ただホント、あっちの家賃とかも気になって」
「だよな、払ってんのに住んでないとか」
「…でも、今日も泊まってって」
そろそろ、隣りにお前がいない朝を忘れてきてるんだ。
今いなくなったら、俺だってそれなりに大人だけど、
やっぱり寂しい寂しい寂しい愛しい。
そうしたら、もっと会いたくなってそばにいたくなって。
また離れて、痛感する恋しさ。
このまま一緒になって、生活を共にする安心感。
どっちが歯止め効かないだろうね。
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