すぐ飽きられて、捨てられる。
こっちに興味が向いてるのなんて、ほんの僅かの間。
「あ」
「え?なに」
「や、思いがけず昔の玩具が」
「あー懐かしー」
タンスから顔を覗かせたのは、俺らが小学生の頃よく遊んだヒーロー人形。
その下には、集めてた缶バッヂとかゲームカード。
「遊んだね」
「遊んだ遊んだ」
「いつから遊ばなくなったんだろ」
「さぁ…小学校低学年までは遊んだ記憶ある」
いつからこの中に入れられたままだった?
いつから俺らは、こいつらとの記憶が途切れた?
その後は、何に夢中だったんだっけ。
そうだ、テレビゲーム。
テレビに向かいっきりで、ヒーローの存在を忘れた。
「…懐かしいな」
「ヒーローに憧れたり、して」
「あー、お前決めポーズとか完璧だったし」
俺らの楽しい思い出、笑って話せる記憶。
でもお前らにとっては、どう思えるの。
寂しかったよな。
急に目もくれなくなって、寂しかったよな。
ずっと仕舞われたまま、忘れられて。
聞こえてくるのは、新しい玩具への俺らの歓声。
無造作、だった。
散々遊んだ。一緒にいた。
そして、突然離れた。
「たまに思い出すことはあったよ」
「なにを」
「昔の玩具。どこやったっけって」
「引っ越しで、なくしたと思ったけど」
「無意識に箱に入れてた」
「ここにいたんだねぇ」
置いて行ってはいないよ。
俺らの初代青春のパートナーたち。
いい加減捨てる年かもだけど、なんか無理。
玩具だけど、いっときの遊び相手だけど、
確かにこいつらとはしゃいでた時期がある。
楽しくて楽しくて、本当に輝いて見えた。
男のロマンって、こういうこと?
そんな想い出が離れず今も、こうして。
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