これだけは、お互い未だに肌見離さずつけてるよ。
「なにしてんの」
「リングがね、汚れてきたから磨いてんの」
「俺もそろそろ手入れしよー」
俺がちとせにあげたリングは、ネックレスになって、
いつもちとせの首下にいる。
ちとせから貰った俺のリングは、右手の中指に。
あえて薬指にはめないのが俺流で。
ちとせだってネックレスにしてんだし、良いんじゃない?
「夜になると冷えてねー」
「あー、リングってかアクセがね」
「首についたときに、冷たっとか思うさ」
「分かる分かる」
「そゆとき外しちゃうんだよね」
でも俺、知ってるんだよね。
抱き合ったときに触れる、ちとせの冷えたネックレス。
ひんやりが伝わる俺の身体、触れた部分から熱くなる。
だから寒くても、アクセが冷えてても、
あえて外さずお互いを抱き締めるんだ。
耳元に息を吹き掛ければ、冷たいピアスが揺れる。
耳たぶが熱く赤くなる。
鎖骨の辺り、ネックレスが密着して熱を帯びて、
あれ、氷は一瞬のことだったんだ。
「雄也のリングも、冷たい」
「ん、でもこれで触れるよ」
「うん」
「ちとせの肩とか、背中とか、なぞるから」
「…いいよ、冷たくないから」
すぐ熱くなる。
アクセサリーの冷たさなんか気にならなくなるくらい。
だから、もっと抱き合っていよ。
ペアのリングとピアスをつけて。
瞬時の冷たさから途端に熱に変わるから。
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