アクセサリーケースを覗いて、しばし考え事。
ちとせが何か取り出し、俺に差し出す。
手には俺らがペアで買ったピアスの俺用の方。
最近、ご無沙汰だけど。
今、これ渡されても…なに?
ちとせは俺に言葉を投げかける。
「ピアス開けたのって、いつだっけ」
「なに、俺?」
「そう、お前。でも俺も同じ頃開けた」
「んー…大学入ってからじゃね?」
「じゃ俺は2年ときか」
突然ピアスの話か、最近全然つけてないな。
例のペアの以外のも、何もつけてない。
そろそろ穴塞がっちゃったかも?
「つけてないね」
「うん、なんとなく」
ちとせの耳には、ペアピアスの片方が光る。
別に後ろめたさは、無い。
「穴開けたのに…」
「うん、勿体ないね」
「塞がっちゃうよ」
穴が開いた。
そこに侵入された。
ずっと一緒だった。
でも慣れてしまった今、
つけることの方が少ない。
「…寂しいよ」
「誰、俺が?お前?」
「…誰だろう、でも寂しいよ」
痛い思いして開けた穴。
当初は胸が弾んだ。
なんとなく。
どうしてだったのか、わくわくして。
ホント、なんとなく。
「塞がっちゃうよ」
「つけなきゃね」
ただ風が通るだけになった穴。
寂しくなって、塞がってしまうの?
ごめんな、放ったらかしだった。
また今日から通じ合おうか。
密接に触れ合っていようか。
「…雄也」
「ん?」
「俺も塞がる前に…また触れて?」
「うん、もちろん。まだまだ」
俺の中に入ってもいいし、その逆も良いんじゃない?
また痛い想いすんの嫌だから、
一回通じ合った穴は、ずっと。
塞がれないように愛してようか。
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