ずっと一緒にいようね
ありきたりな約束の言葉。
言って笑い合って、手を繋いで歩いてたのは、随分前のこと。
遠い遠い、昔のこと。
その手が離れたのは、それから間もなく。
「…ゃ」
「……ぅ…」
「…ぅや、雄也」
ちとせに身体を揺すられて目を覚ました。
…あ…あれ、すげー汗かいてる俺…。
「雄也、だいじょぶ?」
「ぇ…あ、ぁ…」
なんだ?なんの夢みてたっけ…。
なんでこんな…。
「うなされてた」
「そ、か…」
「怖い夢?」
怖い?…いや、違う。
なんていうか…ただ、すっげ寂しくて…。
「泣き…泣き叫びたく…なって…」
「泣きたいの」
「…だいじょーぶ…」
手が離れていったんだ。
しっかり握り締めていたのに、するりと抜けて。
俺は追いかけて、追いつかなくて…。
「…離れた…」
「ん?」
「ちとせが離れた…」
一緒にいようねって言った。
でも離れた。俺の知らない間に。
『中学、私立受けるから』
俺じゃ届かないとこに、行ってしまった。
「ちとせが…」
「雄也」
「いっしょに…」
「雄也、いるよ」
「………行かないで…」
「行かない。いるよ一緒に」
ぎゅうって抱き締められて、やっと息が出来た。
そうだ、幼い頃の記憶、悪夢になっちゃったんだ。
こんなんで泣くなんて、昔のことで泣くなんて、
らしくない。ガキみたいで、でも寂しい。
今はこんなに、近くにいるのにね。
「雄也…一緒にいよ」
「…うん」
「離れないで、ずっと」
「うん…離さない」
ずっと一緒にいようね
約束したのは遠い遠い昔。
一度失った手の温もり。
今は、こんなにも。
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