遠い遠い約束、感じる温もり

ずっと一緒にいようね

ありきたりな約束の言葉。
言って笑い合って、手を繋いで歩いてたのは、随分前のこと。
遠い遠い、昔のこと。

その手が離れたのは、それから間もなく。

声に出すの大事。

「なにコレ、英会話？」

「うん、お勉強」

「ふーん、そっか、ちとせ文語学科か」

『The minister was obliged to resign from the Cabinet.』

「The minister was obliged to resign from the Cabinet.」

「あっ喋った！」

「当たり前だよ！声に出すのが大事なんだから」

「へぇ〜…そだね」

「邪魔すんな」

「…I love you.」

「はい？」

「Repeat after me,“I love you.”」

「…ばか、あっち行け」

「声に出すの大事。りぴーとあふたーみー！！」

「Don't bother me（うっさい）！！」


雄也がバカっぽい。

見つめ合ってたら、関係ないんだから。

たまにしかかけないもんだから、その度に反応される。

「雄也、メガネだ！」
「ん？うん、そだよ」
「頭良さそうに見える」
「見えて悪いかっ」

夜明け前に囁いて

「夜明けがみたい」



唐突だった。
そう、ちとせは唐突に物事を決める癖がある。
この発言だってきっと、何も深く計画立てたりはしてないだろう。

アロマ

買い物を終えて玄関に入り、居間に続く廊下を歩く。
ドアを開ければ部屋中に広がった、すっきりした甘みを含む香り。

「…なに、この匂い」